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【後編】eumoのこれまでとこれから【株式会社eumo 代表チーム 新井さん・岩波さん・武井さん】

【後編】eumoのこれまでとこれから【株式会社eumo 代表チーム 新井さん・岩波さん・武井さん】

前編はこちら:【前編】共感資本社会の実現を目指して、eumoの事業創造【株式会社eumo 代表チーム 新井さん・岩波さん・武井さん】

ー では、eumoが目指していることや活動している内容について知れたところで、代表の皆さんがeumoで活動を始めた経緯を教えてください!

新井さん:
 そうですね。では僕からお話します。eumoは僕が言い出しっぺとしてはじまったのですが、ギリシャ由来の「Eudaimonia(ユーダイモニア)」という言葉が元になっています。「Eudaimonia」は一般的に幸福の意味を持つ、いわば「well-being」の一属性です。社会のみんなが、生きがいや働きがいに気づいていけるようにとの願いを込めてこの社名を名付けたのですが、実はeumoの前身として「ユーダイモニア研究所」という一般社団法人がありました。そこに僕と岩波さんが関わっていた形です。なので、ユーダイモニア研究所に関わっていたのは僕よりも岩波さんが先だったりします。

 僕はもともと鎌倉投信という、投資信託委託会社に勤めていました。資産運用の仕事をしていたのですが、仕事をする中で「この仕事ではお金を持っている人のお金を増やすことしかできない、つまり貧富の格差を助長しているのではないか」ということに気づきました。そして、時を同じくしてトマ・ピケティの『21世紀の資本』を読み、「果たして自分の人生を貧富の格差を助長することで終わらせて良いのだろうか?」と思うようになりました。

 もちろん、鎌倉投信の事業や、そこで行われている仕事は必要な役割です。しかし、「このまま人生を終わらせたくない」という気持ちが強かったのと、あとはなんというか、スタートアップの精神というんですかね笑。鎌倉投信は2008年にスタートして、10年で黒字化の目処が付きました。ほぼ安定が見えて、社会的に成り立つのがわかったので、ちょっと物足りなくなってしまったのかもしれません。

 『21世紀の資本』でトマ・ピケティから課題を提示され、何をつくろうかと考えたとき、「格差を生まないお金」をつくりたいと思ったんです。それがeumoの始まりです。2018年のことですね。

 これは裏話というか余談なのですが…。何故2018年のタイミングだったかというと、理由が二つあります。

 一つは、その年は、サッカーのW杯が開催されていて、アイスランドが大活躍したときでした。アイスランドの活躍が話題になったのですが、アイスランドの人口は33万人なんです。 33万人の人口で一つの国が成り立ち、独自の通貨が存在し、貿易ができるんです。それを知って、33万人で経済圏が成り立つのであれば、「自分でもできるな」と思いました。この世の中の全てを変えることは難しいことですが、33万人でできるのなら、自分たちでも「共感で循環する経済」を実現できるのではないか、と思ったことがeumoを立ち上げたそもそものきっかけです。

 もう一つは、鎌倉投信時代、SGDsに配慮したビジネスをやっていたIKEUCHI ORGANICがベンチャーキャピタルから投資を受けていたのですが、いろいろな事情があって株式を持っていられなくなり、期限がきた時に鎌倉投信では引き取れなかった、ということがありました。

 それを僕が引き取って、eumoを立ち上げて独立しました。そして、「今の資本主義でうまくカバーできないものをどうやって持続可能にしていくか」という問いの言い出しっぺになりました。その後、岩波さんがジョインした形ですね。なので、この後は岩波さん、お願いします。

説明がありません
鎌倉投信時代の新井さん

岩波さん:

 私は新卒で銀行に入社した銀行員で、「お金の世界で働く人間」でした。働くなかで、お金に対して感じることがたくさんありました。当時は1990年代後半なので、世の中の常識はまだまだ金融資本主義です。お金を稼ぐこと、業績をあげることは当たり前のように良いことで、給料を増やすことは経営者の責任だと誰も疑わない、そんな時代でした。「お金」というものに対して、本質を見失いかけ社会の認識が少しおかしくなりはじめていた頃ですね。そういう世界で、「なんのためのお金か?」ということを考えるようになりました。お金のために死んでいく人を普通に見たり、社会の第一順位がお金になっている感覚がありました。

 銀行で働いている人は、もちろんモチベーション高く働いている人もいましたが、かなりの割合で辛そうに見えましたし、ノルマなどがあって正直あまり楽しそうではなかったんです。「社会人になることはお金の物差しに縛られていくことかもしれない」と思ってしまうような環境でした。そんな現実を見ながらも、もともと金融は世の中の流れを学ぶために入社して、3年で辞めようと思っていたので、次は何か違うことをやりたいと考えていました。いいことも悪いことも含めて、銀行ではいろいろ学ばせていただきました。
 退職後は色々なベンチャー企業や面白そうなことをやっている人を探し、2002年に組織開発や経営支援事業を行う事業を何人かで共同創業しました。
 創業した会社はもともとは違う名前だったのですが、2008年に名前を「ワークハピネス」に変えました。根底にあったのは、「働くことは楽しいこと」という考え方です。

 私は論語が好きなのですが、論語の中に「努むるは好むに如かず、好むは楽しむに如かず」という一文があります。「頑張っている人は好きでやっている人に敵わない、好きでやっている人も楽しんでやっている人に敵わない」という意味です。私はこの一文が真理だと思っています。
 組織開発や経営支援事業をやる会社を創業したのも、楽しんで働ける組織を増やすことで世の中が幸せになると考えたからです。

 2008年、13年前に社名を「ワークハピネス」にすると言ったら、周りからは反対されました。私はこういう考え方も否定はしませんが、「ビジネスは業績をあげて、給料をあげて、それで社員が幸せになる。ハピネスを掲げて、業績をあげられない経営者はダメだ」というような意見ばかりでした。
 ですが4,5年前くらいから反応に変化が見られ始めました、どんな反応があったと思いますか? ━━「いい社名ですね」という意見が8割でした。世の中の価値観は、どんどん変わっているんです。

 私は、色々なコミュニティをつくっています。その中で「違和感を大事にしよう」と言い続けていて、いわば「変態ネットワーク」(笑)と言えるようなものをつくっています。eumoも一つの「変態ネットワーク」ですね。
 私の中での「変態ネットワーク」とは、自らの感性に従ってそれを大切にして生きている人のコミュニティのを意味しています。
 先ほど、世の中の価値観はどんどん変わるという話をしましたが、世の中の常識に違和感を持っている人は絶対に増えています。
 しかし、多くの人は常識に従って違和感を抑えて生きていくことが賢い生き方だという思い込みをしています。こういった思い込みはそういう教育を受けてきているために起こってしまうのですが、私はは人間は感性の方がよっぽど重要だと思います。

 大事にしたいものを大事にできずに自分を騙し続けてしまうと、いずれ人は自分が何者かわからなくなります。結局誰かの基準や社会の基準に従って生きていく生き方に慣れてしまって、自分という人間が何だったかわからなくなるんです。
 そうすると、生きることや仕事をすることの本質的な意義から、どんどん自分が遠ざかってしまいます。

 私は普段からこういうことを考えていて、5、6年前に本格的に仕事として振り切りたいと思っていました。それで、「変態ネットワーク」の一つであるユーダイモニア研究所で活動を始めました。
 当時ユーダイモニア研究所では研究が主になっていて、僕たちが目指す社会について研究したり、どういうことをしたら良いのかを模索したりしていたのですが、研究が進むにつれて、実践に移していくタイミングでした。そのタイミングが新井さんの起業のタイミングと重なり、僕もeumoにジョインすることになりました。
 最後は武井さんですね!

ワークハピネス時代の岩波さん

武井さん:

 僕は、eumoにジョインする前に二度起業の経験があります。

 一度目は、22歳頃にアパレルのインターネットディアの会社を創業したのですが、1年で倒産させてしまいました。一緒に仕事をしていた仲間に凄く迷惑をかけたので、この経験が自分にとって、「働くとはなにか」を強烈に考えるきっかけになりました。

 仲間は大学や大企業を辞めてまで会社を手伝ってくれていました。他にも借金をしてもらったり、給料を満足に出せなかったりもして、その上会社も潰してしまったので、本当に申し訳なかったです。仲間に迷惑をかけてしまったとき、「自分はなんのために会社を立ち上げて仕事をしているのだろうか」と考えました。世の中を良くしたいし、人の役に立ちたいし、誰かを幸せにしたいという想いはもちろんありましたが、そのために仲間の人生をめちゃくちゃにしてしまったんです。この強烈な経験から、みんなが幸せになる会社をつくれないと意味がないと気づきました。

 お客さん、一緒に働くパートナー、その家族、地域経済、地球環境。全部をひっくるめてプラスになっていく活動をしなければ、社会的な価値にはならないと思ったんです。 
 だから改めてそういう会社をつくりたいと思い、12,3年前に不動産テックの会社、「ダイヤモンドメディア」を創業しました。 

 この会社では働く時間、働く場所、休みなどを社員の自由にしていました。給料をオープンにして自分の給料を自分で決めたり、社長や役員は選挙をして決めたりする仕組みをつくりました。12年くらいかけて、こういった社風を仕組みとしてつくっていけることがわかったのですが、やればやるほど社会の仕組みの方がおかしいということに気づきました。

 良い会社を作りたいと思った時に、本当に良い会社にすればするほど税金が重くのしかかります。例えば今の法律だと、社長が会社を私物化したほうが節税対策ができたりと、社会のシステムがブラック企業を生み出しています。社会の仕組み自体が変わって行かないと良い会社も増えないし、良い取り組みをしている人の方が損をする社会になのではないかと考えるようになりました。

 不動産の会社をする中で、お金の力学に気づきました。不動産は、金融と一緒で資本の力学が強く働きます。しかし、お金のために不動産を扱うと街が壊れていきます。使われていない空き地やパブリックスペースは直接的にお金を生まないので無駄として考えられていき、どんどん土地活用の名目のもとワンルームマンションになっていきます。不動産業界をお金で回せば回すほど、地域の関係性は切れていくんです。

 お金は、人間関係がなくても取引ができる便利なツールです。お金に頼れば、人間関係がなくても取引の仕組みが成り立ちます。すると人間関係のない街になり、そこに住んでいる意味も失われていきます。

 ワンルームマンションばかりたてる事業者が上場し、 2010年から日本の人口は下がっているのにも関わらず、毎年70万から80万の新築住戸が建て続けられています。事業者にとっては、新築住居を建てないと業績が上がらないからです。政治はGDPを上げたいからこれを止めません。こうやって街が壊れていくことは社会問題としても認識されています。
 これを知ったとき、経済合理性の悪影響に気づきました。僕はこれまで不動産業界に「住宅総量規制」という規制をかけるロビー活動をずっとしているのですが、その中で新井さんと岩波さんに出会ったんです。二人の見ている方向は、僕が目指している社会の方向と完全に同じでした。

 ダイヤモンドメディアは提供するソリューションが不動産のマーケティングを支援するシステムをつくることだったので、僕の会社は結果的に、問題を引き起こしている事業者たちの売り上げをどうやって伸ばすかを後方支援していたことになります。

 そうではなく、もっと根本的な課題解決に向かいたいと思っていたところ、会社を離れるタイミングが来ました。その時には新しい社会創造をしているeumoという会社が出来上がっていたので、eumoにジョインし、新井さんと岩波さんに合流しました。

ダイヤモンドメディア時代の武井さん

ー 皆さん、ありがとうございます。様々な理由やきっかけを通してeumoに集まったのですね。皆さんそれぞれ、社会に対する違和感や変えたいものがありeumoで活動されていると思いますが、新たな社会創造に挑んでいくにあたって、不安をどのように乗り越えているのでしょうか。これから新しいことに挑戦しようとしている方に向けて、お願いします。

新井さん:

 「人を信じる力を持てるかどうか」だけです。仲間を信じることができるか、ですね。僕は、不安や怯えといった感情に唯一対立できるものが「関係性」だと思っています。

「お金」のことばかりを考える人たちが生まれれば生まれるほど、人はコミュニティを失っていきます。コミュニティを失うと、関係性が軽視されるようになります。

 でも、自分を生きるということをしていくためには関係性が不可欠なんです。「独立」という言葉がありますが、独立するということは人に頼ることです。独り立ちするわけじゃないんですよ。

 例えば、大企業に入ってしまうと、できることがたくさんあるし、大きいものを動かすこともソーシャルな活動をすることもできます。でもこれは、「できるように見えているだけ」です。会社に来た依頼を仕事としてこなしている以上、「貴方」にお願いしてないんです。会社にお願いしてるんです。どんなに社会性のあることをしたとしても、誰も「貴方」自身を評価してくれません。

 だから、「貴方を生きる」ということができないんですよね。貴方が、真に貴方を生きられる状態になるということが次の社会を生んでいきます。だから大企業にいる限りはマジョリティでしかなくて、マジョリティに入ることによって不安を解消してるんだけど、本当に一人になった時にものすごい不安に襲われるんです。

 決して、大企業に入ることが悪いことだとは思いません。しかし、早く自分を生きることができるようになるという事がすごく大事だと思います。

 だから僕はいつも言うんです。「裸でも生きられますか」と。

 僕は、もし事業に失敗して路頭に迷ったとしても、みんなが助けてくれると信じています。少なくともそう言ってくれる人達が仲間にいますから。そういう人が、貴方の周りにいますか?

 結局、自分の名前で生きていく、ということはそういうことなんです。みんなマイノリティなんです。全員がマイノリティだということに気づかないといけません。

 貴方の周りにある関係性を思い浮かべて、「貴方」を生きてください。

代表チームの皆さん(左:岩波さん、中央:新井さん、右:武井さん)

ーありがとうございました!

企業名:株式会社eumo
HP:https://eumo.co.jp/
設立年:2018年9月
事業内容:通貨プラットフォーム事業(共感コミュニティ通貨eumo)、アカデミー事業、社会システムデザイン事業
事業紹介:目に見えない共感というものを資本に活動できる、共感資本社会の実現に向けて事業を展開しています共感コミュニティ通貨eumo:https://currency.eumo.co.jp/
アカデミー事業:https://eumoacademy.com/

この記事を書いた人

miyunagai

ライター、インタビュアー。日々耽るのは享楽、芸術は勉強中。希望ある未来と懐かしくなる過去をつくるべく、ゆるりと南船北馬。現在大学四年生。