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海外のSDGsの取り組みーポルトガル編「BeachforAll」

海外のSDGsの取り組みーポルトガル編「BeachforAll」

本記事では、「ポルトガル/BeachforAll」のSDGs(目標10 人や国の不平等をなくそう)に対する取り組みを取り上げたい。

(画像引用:ユニセフ 10.人や国の不平等をなくそう | SDGsクラブ

ポルトガルとはどんな国?

ここではポルトガルの基礎情報を記載したい。日本の約4分の1程の面積に日本の人口の8.14%程(1,029万人)の人口が生活するポルトガルは国の西部~南部の約半分が海と接している海洋国家である。

海に親しみも深く、海水浴が可能なビーチの数は554箇所程存在しており、これは対人口比率で換算すると日本の約6倍もの数を有していることになる。

●基礎情報
面積:91,985平方キロメートル(日本の約4分の1)
人口:約1,029万人
首都:リスボン市(人口:約50.6万人)
言語:ポルトガル語
日本ビーチ数:1079箇所
ポルトガルビーチ数:554箇所

ポルトガルにおける「障がい者の海水浴」の現状とは?

日本よりも多くのビーチを有するポルトガルにおいて、「海水浴の機会」がどんな人にも均等に開かれるような社会をつくる「BeachforAll」という取り組みについてを取り上げたい。「BeachforAll」とは国立リハビリテーション研究所とポルトガル環境庁(APA)、Turismo de Portugalが主導する2005年から進められている取り組みである。この取り組みは、ポルトガルのビーチに障がいのある人や身体の不自由な人を含む、できるだけ多くの人々がアクセスしやすく、訪れるすべての人に対して、公平性、安全性、快適さ、尊厳、自律性を保証することを目的としている。

このプログラムのもと国内に554箇所のビーチがある中で、海岸や川に、移動に介助を必要とする人々が利用できる水浴場が208箇所も存在しており、これらのビーチには、

・周囲の公道から入浴エリアへの簡単で障害物のないアクセス
・障がい者専用駐車場の設置
・障害物が全くない、ビーチ上のアクセシビリティな歩行者専用通路の設置
・手すり付きの滑らかなスロープや、身体の不自由な方が利用できる機械式リフトでのステップの補完
・ライフガードの設置

などが備わっており、明示的に青と黄色の障がい者利用可能ビーチの記号の付いた白い旗が立てられている。

これらのビーチの多くには水に簡単に入れるようにする水陸両用の車椅子(またはその他の手段)が用意されており、障がい者であっても、常に何らかの介助が必要とはなるものの、海で泳ぐことができるように工夫されている。

この取り組みでは要件を満たすビーチに対してバリアフリービーチ賞を毎年授与しており、様々な団体の努力によってまさにBeachforAllな環境が整う海水浴場の数は毎年増加し続けている。

例えば、カスカイスの海水浴場では、無料で身体の不自由な人たちが利用できる海水浴用の車いすが準備されている。この車いすは週末を含む毎日午前9時から午後7時まで使用可能となっており、健常者と海水浴の機会に差がないことが見て取れる。

 日本での「障がい者の海水浴」について

では日本の状況を見ていく。

2020年に株式会社ミライロが障害のある当事者に対して海水浴場の利用状況についてのアンケート調査を約300人を対象に行っている。その結果として、日本に住む障がい者の約80%が海には訪れているものの、その目的の多くは「風や音・景色を楽しむ」ためであり、訪れた約90%の方が「バリアフリーが整っていない」と感じる結果だった。そして、整っていないと感じる要因の中で海水浴場での課題は「トイレが利用しにくかった」ことや「砂浜まで移動がしにくかった」ことが挙げられている。

上記の結果からもわかるように日本において「海水浴の機会」は未だ均等ではない状況が見て取れる。

また、その機会の均等への理解も薄く、障がい者の方も楽しめるビーチを作るためのクラウドファンディングについても残念ながら約400万円の目標に対して達成率15.8%の68万円しか支援を得ることができず、未達となっている。

一部の地域や団体が上記課題を解決するべくバリアフリービーチへの取り組みをしているものの、どれも常設の整備ではなく、イベント形式の啓蒙活動にとどまっている。

調査者所感

私は今回の調査を通じ、ポルトガルの「BeachforAll」という事例に驚いた。誰もがどこでも平等に「楽しめる」環境を作るという観点は、まだまだ日本には浸透していない考え方であると感じた。この記事を通して世界にはこのような取り組みが存在するということを知ってもらいたいと思うと同時に、日本での実現の難しさにもまた、頭を抱えた。

<参考文献>
・ポルトガルの障害者利用可能ビーチ
https://www.visitportugal.com/ja/node/315915
・ポルトガルカスカイスの誰にでも易しいビーチ
https://jovem.cascais.pt/en/node/1163
・国立リハビリテーション研究所
https://www.inr.pt/programa-praia-acessivel
・portuguese-environment-agency-apaについて
https://apambiente.pt/en/apa/portuguese-environment-agency-apa

この記事を書いた人

しょせ

心優しき青年。