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ほんのささいな「ありがとう」の積み重ね、その先にあるもの

ほんのささいな「ありがとう」の積み重ね、その先にあるもの

「ありがとう」は最強だ。

その場の空気をおだやかにする。その場に笑顔を運んでくる。

「ありがとう」は万能だ。

なにかをお願いするとき。なにかをしてもらったとき。「ありがとう」のひとことは、物事をスムーズに動かす。

「ありがとう」は魔法だ。

その言葉を手渡すひとも、その言葉を受け取るひとも。どちらの心も、じんわりとあたたかい何かで満たされる。

結婚して25年。

人並みに夫婦げんかもしてきた。暗雲が立ち込めるようなできごとも、それなりに経験してきた。

そりゃあそうだ、もともと赤の他人。夫婦間でトラブルはまったくないし、いつだって順風満帆、なんてことはありえない。それでも、仲のいい夫婦ですかと聞かれたら、「はい、仲のいい夫婦です」と自信をもって答えると思う。

だってわたしたちは、「ありがとう」を欠かさない夫婦だからだ。

心のなかでそっとつぶやく「ありがとう」ではなく、言葉で「ありがとう」を相手に届ける夫婦だからだ。

ソースとってくれる?と頼まれて、冷蔵庫から出して旦那さんにわたす。

「ありがとう」

わたしよりも早く帰宅した旦那さんが、洗濯物をとりこんでくれた。

「ありがとう」

今朝頼まれた振込しておいたよ、と旦那さんに伝える。

「ありがとう」

牛乳が切れているのに気づいた旦那さんが、会社帰りに買ってきてくれた。

「ありがとう」

こんなふうに、些細に思える「ありがとう」を少しずつ積み重ねていく暮らしは、とても気持ちがいい。

「ありがとう」は伝播する。

このやりとりがわたしたち夫婦の日常だから、子どもたちもそれにならうようになった。

ほんのちょっとしたことにも、「ありがとう」を言葉で伝えられる子どもたちになった。

「お礼ちゃんと言った?」とか「ありがとう、は?」などと声かけをしなくても、「ありがとう」を自然と言えるように育った。

子供たちは、わたしと旦那さんが、「ありがとう」「ありがとう」と伝え合っているのを見て育った。

「ありがとう」という言葉には、その場の空気をまるく収めるような、まぁいっかと許してしまえるような、そんな不思議なチカラが宿っているのを、子供たちなりに気づいたんだろう。

「ありがとう」のおかげで、お互いの心がざらつくような、わだかまりを残すような状況は避けられる。

おまけに、コミュニケーションコストは低く済む。夫婦間のコミュニケーションコストが低いから、お互いの気持ちが伝わりやすい。

すべて、「ありがとう」のおかげ。

ほんのちょっとしたことにも、「ありがとう」を言葉で伝え合う。

たったそれだけなのに、家のなかはとても居心地がいい。精神的にすり減ることがないんだもの。

これって、心にとってすごくエコロジー。

心のなかで「ありがとう」とそっとつぶやくのもいいけれど、言葉にして「ありがとう」を伝えるのは、もっとイイ。

「ありがとう」って、最強なんだから。

この記事を書いた人

み・カミーノ

まあまあ長い翻訳歴のアラフィフ特許翻訳者(日→英)。3人の子をもつワーキングマザー。合計15年間の保育園生活を経て、フルタイムで働き続けている。ライフワークは、ゴスペル・国際交流・文章を書くこと。亀田製菓の"柿の種"(特にわさび味)中毒。