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知らない人との、ちょっとした共同作業

知らない人との、ちょっとした共同作業

まだタピオカが流行していなかった高校生時代。あの頃、友達と何を買い食いしていたのか何一つ思い出せないから不思議なものだ。

私は、高校に自転車で家から40分かけて通っていた。あの頃が体力の限界だったと、8年くらい経った今、しみじみと感じる。

通っていた高校の近くには大きなショッピングモールがあり、放課後はよく友達と寄り道していた。私の学校はほとんど女子校みたいなものだったから、当時は他校の男子高校生とすれ違うだけでドキドキしたものだ。

そろそろ帰ろうと駐輪場に友達と向かっていたときのこと。買い物帰りの主婦が、横一列にぴったり並んだ駐輪場の自転車のなかから、強引に自分の自転車を出そうとしていた。乱雑に置かれた自転車にイライラする気持ちは分かるが、今思い出しても危険な行為だった。

案の定、隣の自転車からドミノ倒しのように綺麗に倒れていった。私は咄嗟に動いて、途中でそのドミノを止める事に成功した。

すると、友達や近くにいた男子高校生までもが自転車を立てるのを手伝い始め、すぐ元通りになった。その時、知らない人とも団結出来る素晴らしさを知って、少し感動したのを覚えている。その主婦から「ありがとうございます」と言われた一言が、今でも忘れられない。

ちょっとした良いことが、私の価値観を少しだけ変えた。

このご時世、接触や人との距離を気にするからこそ、思い出した「ちょっといいこと」、なのかもしれません。

この記事を書いた人

いしかわ

埼玉県在住20代女性。5年一貫の看護学校に通い、看護師として3年勤めた後、意を決して現在文章を学ぶ学校に在籍。ライトノベル、脚本、漫画原作、ゲームシナリオと、様々な可能性を広げるために絶賛勉強中。