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福岡で、人を繋げ未来をつくる【株式会社カムラック代表 賀村研さん】

福岡で、人を繋げ未来をつくる【株式会社カムラック代表 賀村研さん】

今回のキーワードは、「中小企業と人」。温かく取材に応じてくださったのは、福岡で障害者就労継続支援などを行う、株式会社カムラック代表の賀村さん。常に未来を考え続ける賀村さんの、社会や未来への想いとは。

代表の賀村さん

ー本日は宜しくお願いします!さっそくですが、事業内容を教えてください。

福岡に住む地域の方々がITを通じて地域を支え、持続可能な地域づくりを可能にすることを目指し、障害者就労継続支援A型B型や就労以降支援、相談支援事業などを行っています。

カムラックでは、障がい者就労継続支援をホームページ作成やアプリ開発などといったIT分野を通して行っており、この事業が主に会社の成果となっていますが、実はそれだけではありません。例えば、結婚して子育てをしているお母さんや定年退職後もまだまだ働きたいベテランの方などが活躍できるようにするための支援事業も行っています。

今の社会では少子化で労働人口が足りていないという課題に向き合えておらず、あらゆる人の働きたいという意欲と働く仕組みがマッチしていない現状があります。そういった課題に対して、障害者の方だけでなく、もっと多様な人の活躍を支え、持続可能な社会をつくることを目指しています。

ー「人」を中心に、様々な分野の事業があるんですね。では、事業を運営するにあたって大切にしていることはありますか?

「中小企業と人」というキーワードを大切にしています。事業を通して地域の人が地域で活躍できる土台をつくり、福岡を元気にしていきたいです。「人との繋がりが経済の土台を創る」と考えているので、中小企業としてその役割を果たして行けたらと思っています。

また、人との繋がりを生むという点では、有名な昔の日本の経営方法「三方良し」を意識しています。過去日本の経済が発展する段階では、お金を持つ人のためにビジネスが行われ、利益のために人権や環境が犠牲にされてきた背景があります。今でこそ、SGDsなどの概念が登場し、社会的価値や持続可能性がより重視されるようになってきました。「中小企業と人」というキーワードのもと、「三方良し」な事業を通じて、福岡に貢献したいですね。

記念パーティの様子

ーありがとうございます!ここで、そもそもの創業までの経緯を教えてもらえますか?

僕はもともと、東京のIT業界で会社員としてバリバリ働いていました。妻の地元が福岡だったので子供が生まれたのをきっかけに移住し、しばらくは福岡のIT企業で仕事をしていましたが、その後独立し、40歳のときに起業しました。

福岡に移住し、子育てをするうちに何かしら地域に貢献したい、子供が育っていく街をよくしていきたい、という考えるようになったことがその理由です。

また、IT業界の良い面も悪い面も見てきたので、「IT業界は仕事はたくさんあっても働き手がいない」という現状への課題も感じていました。この業界を好きになってくれる人を増やし、育てることが必要だとも考えていましたね。独立前働いていた会社で新規事業企画の責任者を担っていたので、ITと地域を掛け合わせた事業計画を作ったのですが実現が難しく、最終的には独立して起業しました。その事業計画こそが、現在行っている事業なんです。 

起業当初の様子

ー福岡へ移住されたことや、もともとITの仕事をしていたことが起業の経緯に大きく関わっているんですね!それにしても、カムラックの事業は、前の会社で実現が難しかったように難易度の高いビジネスモデルだと思うのですが…起業するにあたって、不安や懸念はありませんでしたか?

懸念というより、「挑戦する」ということに対して、思うところがありました。

僕たちは失敗をしないための教育しか受けていません。大量生産大量消費の社会のための、同じ成果を出す教育です。そうすると、どうしても失敗しない人が偉くなったり、リスクを回避できる人ばかりが褒められ、結局何も変わらないということがどこの会社でもあります。そうやって挑戦する人が減っていってしまいます。そういう現状を変えていきたいという思いもあって、自分で独立して起業するという選択をしました。

ーなるほど。では、起業してから会社づくりで大切にしていることはありますか?

実は、僕たちの会社には、会議や役職がありません。僕自身が、人から管理されたり人を管理するのが苦手なんです。各事業所内で役職はあったりしますが、会社全体では部長、課長、係長などの役職はありません。他にもグループ会社の中で副業をしても良くしていたりと、社員やスタッフが多様かつ自由な選択肢をとって働ける環境を大切にしています。

社員やスタッフに、お金以外の幸福感を得てほしいという気持ちはありますね。見学に来た社外の人に社員やスタッフを褒めてもらうことも多かったり、外から褒めてもらえる会社づくりができていたら嬉しいです。

スタッフや社員の皆さん

ー会議や役職がないのは凄く珍しいですね!では、会社を経営したり事業を運営する上で、現在のカムラックの課題は何かありますか?

正直な話、後継者不足です。ここまで順調とまではいかなくとも、なんとかうまくやってこれたのですが、「賀村さんがいなくなったらどうなるの?」という言葉を掛けられることも多く、次世代のこの会社、この業界の担い手や経営者の育成は、大きな課題だと捉えていますね。社会課題を解決するためならあらゆるアプローチを考え続ける「カムラックイズム」を持った人をいかにして育てていくかが、今カムラックとして直面している課題だと思います。

ーここで、少し違う質問をしてみたいです。40歳のときに福祉の分野で起業された賀村さんですが、もし起業するきっかけがなければ、どのような人生だったと思いますか?

うーん、どうだろう。それでも、ITを軸に障害者や女性の活躍に貢献できるような仕事をしていたと思います。障害者や女性など、人に対する問題はフィールドやビジネスモデルが違っても、いずれ直面する課題です。

逆に言うと、あらゆるフィールドやビジネスモデルをもつ企業がこの課題解決に取り組めば、解決を図れる問題でもあると思います。もし起業していなくても、何かしらの形で関わっていたと思いますね。

事業所の様子

ー確かに、あらゆる企業が課題解決に取り組めるのが理想ですよね。現代の日本ではその反面、社会課題解決の事業ができにくかったり、生き残りにくかったりすると思うのですが、その課題に対して賀村さんの見解をお聞きしたいです。

「視野と視座」だと思います。例えばテスラのイーロン・マスクは、アフリカ生まれでアパルトヘイトの影響を受けて世界平和を願うようになり、その先に地球の持続可能性や宇宙をみています。事業をするうえで常にその先を考えているんですね。それと同じように「地域」や「社会」など、大きな括りで世の中を見ていくと、やらなくてはならないことや、とるべき立ち位置がわかってくると思います。解決方法が一つだけだと思わず、視座を高く、視野を広く持って様々なアプローチを考えることが重要なのではないでしょうか。

ーでは、最後になりますが、この記事の読者の方へメッセージをお願いします。

僕たちや僕たちの親の世代は、物質的貧困世代でした。それをなくすために産業が発達し、日本は豊かになりましたが、その発展の裏で同時に多くの課題も残しました。物質的幸せがあっても、心の幸せがない時代をつくってしまったように思います。僕はこの一種の反省を踏まえて、皆さんの未来をつくっていくために事業をしています。同じようにみなさんも、これから生まれてくる未来世代のことを考えて社会の一員として生きていってほしいなと思います。今は、本当にたくさんの選択肢があります。今回の取材を通して、こういう事業やフィールド(福祉)で活躍したいと思ってくれる人が増えたら嬉しいです。 

ーありがとうございました!

【会社情報】
会社名:株式会社カムラック
設立年:2014年
HP:https://www.comeluck.jp/

■編集後記

こんにちは。今回取材を担当させて頂いたmiyunagaiです。

今回はカムラックさんで「中小企業と人」というテーマで取材させて頂いたのですが、自分自身地方創生に興味があったこともあり、凄く色々なことを考えさせていただく機会のあった取材でした。

現在、大手企業をはじめとした多くの企業において「SDGs」が注目・着手されている一方で、日本の企業の99%以上が中小企業で成り立っている現実があります。世界がより良い未来に向かって進んでいくためには、大手企業だけでなく、中小企業が前向きな変化を持つことが重要だと思います。

カムラックさんでは、「中小企業にしかできない、地域に目を向けた事業」が行われています。勢いのあるベンチャーや大手企業が関東に集中する中で、社会課題の解決といった価値提供だけでなく、福岡から地域のための事業が行われていく様子が、地方創生の一環としても社会のモデルとなってくれるのではないかと思います。

また、カムラックさんでは会社全体としての会議や役職が設定されていないそうです。こういった新鮮で珍しい取り組みも、中小企業ならではの魅力に感じます。代表の賀村さんのお人柄もすごく素敵なので、是非取材記事をご覧ください!

この記事を書いた人

miyunagai

ライター、インタビュアー。日々耽るのは享楽、芸術は勉強中。希望ある未来と懐かしくなる過去をつくるべく、ゆるりと南船北馬。現在大学四年生。