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虐待サバイバーの課題を解決するために【株式会社RASHISA代表 岡本翔さん】

虐待サバイバーの課題を解決するために【株式会社RASHISA代表 岡本翔さん】

今回取材したのは、株式会社RASHISA代表取締役 岡本 翔さん。キャリアや就活の領域で創業した後、現在は「虐待問題×ビジネス」の領域で事業を創っています。「虐待の後遺症」による “働き辛さ” の 緩和」を行い、「日本の労働力の底上げの実現」を目指すソーシャルスタートアップとしてチャレンジをするに至った経緯について、また、社会起業家になることについて、その困難さも含め、お話を伺いました。

株式会社RASHISA代表取締役 岡本 翔さん
高校時代に起業家に憧れて、福岡県の大学に進学。 学生時代に就活支援事業で株式会社RASHISAを創業。九州の学生と東京のベンチャー企業のマッチング事業を行う。2018年に上京。翌年、就活サービスをリリース。同年2019年に同サービスを事業譲渡した後、2019年12月から「虐待問題×ビジネス」の領域で事業を創っている。2020年4月から被虐待者向けBPOサービスRASHISAワークスを開始。現在は並行してダイバーシティ、D&I領域に特化した制作事業も行っている


ー岡本さん、どうぞよろしくお願いします。まずは、現在取り組まれている事業について教えて下さい。

よろしくお願いします。2019年12月より、「虐待問題×ビジネス」の領域で事業を創っています。主なサービスは、虐待の後遺症で悩む虐待サバイバー向けのBPOサービスである「RASHISAワークス」です。ゆくゆくは自社を虐待問題を解決するリーディングカンパニーにしていきたいと思っています。

起業のきっかけは「起業家への憧れ」

ーいわゆる「学生起業」をされているとのことですが、きっかけは何だったのでしょうか?

もともと、高校時代から「起業したい」「起業家になりたい」という思いが先にありました。2017年に、まだ大学生でしたが株式会社RASHISAを創業しました。今のサービスとは異なる、就活支援事業です。

ーなぜ就活支援だったのでしょうか。

僕はHRの領域が好きだったんです。大学生のときに、キャリアや生き方に関心を持っていて、この領域を事業にするのは、就職というドメインだと思ったことがきっかけですね。

その頃の僕は、個人の変わるきっかけを作ろうと思っていました。例えば、人生をネガティブに捉えている人がポジティブに捉えられるようにしたい、とか。いかに個人のキャリアを構築し、尊重していくか、ということを考えていました。

今でこそ、それだけでは社会は変わらなくて、社会の側、社会の歪みにも構造側にアプローチしないといけないと思っているのですが、それも、就活支援事業の時代に目の前のユーザさんに徹底的に向き合うことで気づいたことです。定性データが溜まっていったのは、いまにも活きていると感じます。

ーそこから現在の事業に転換したきっかけは何だったのでしょうか?

起業して2年後の2019年に、「ソーシャルビジネス」という概念を知りました。ビジネスの力で社会課題を解決できる、社会を良くしていけるのではないか、という気付きがあり、自分にもなにかできることはないか、と思っていました。

その折、たまたま友人が紹介してくれた会で出会った起業家の方と壁打ちをしたことが、直接のきっかけとなります。もともとは出資してほしくて接触していたのですが、メンタリングをしてもらうなかで、自分が本来やりたかった、「虐待問題解決」に関して背中を押してもらうことになりました。

具現化における課題は「見えない偏見」

ーまだまだ事業としては未知の領域だったのではないかと思いますが、進めていく中での気づきやギャップなどあったのではないでしょうか?

はい。当然想定はしていましたが、思っていたより偏見が強いという事実に直面しました。具体的にはBPOという領域ですが、「虐待を受けた人が仕事をしているの?ちゃんと働けるの?」などの不安の声を頂いたのです。

残念ながら、「虐待の後遺症」というものは、社会からほぼ認知されていません。そもそも「虐待サバイバー」と出会ったことがないから、お客様にも印象がない。そういう不安を払拭することから始めないといけません。

ー事業における難しさというのは、どのような点にありますか?

また、ビジネスモデルとしては、受託の仕事を虐待を受けたことのある方たちに遂行してもらうことで、彼らからお金をもらうのではなく、仕事の対価をお渡し出来る、というものです。

だからこそ、リモート勤務の促進などを通じて業務を効率化したり、アウトプットの質を高めたり、より単価の高い上流部分の仕事を受注する必要があり、そういった仕組みづくりが苦労するポイントかなと思っています。

ーそれを解決すると、どのようなことが起こりそうでしょうか。

これまで、僕たちと同じようなビジネスモデルを持った市場のプレイヤーはあまりいませんでした。それはつまり、「虐待問題」を解決する仕組みがなかったことになります。僕たちが成功することで、「社会性と事業性」の両立を後世に示し、もっと多くの人が働ける場が増えていくことを目指しています。

組織づくりは「無理をしない」がキモ

ー次に、組織について聞いてみたいと思います。虐待サバイバーの方とともに組織を作る上で、気をつけていることはありますか。

自分もメンバーもですが、「自己犠牲を良しとしない」ことを大事にしています。身近な人だけではなく、自分を大事にする、ということです。

ー具体的に、社内で意識していることはありますか?

組織のなかで「虐待問題の社会化」、つまり、虐待の後遺症を理解してもらうことです。例えば、虐待を受けた方は幼少期に認められなかった経験から、つい頑張りすぎてしまい、パフォーマンスをコントロールできないことがあります。そういうことを知らない人からは「なんでこの人は体調を崩してしまうんだろう」と思うかもしれない。でも、認められるのが嬉しくなって頑張りすぎてしまうんだ、ということが理解できれば、より良い声掛けや働き方が出来るのではないかと思っています。

ーなるほど、まずは理解から。ということですね。そのために具体的に取り組んでいることはなんですか?

まず、虐待に関する勉強会の実施です。「トラウマインフォームドケア」というものがあるのですが、「トラウマをもっている人にいかにコミュニケーションをとるか」に対して、全スタッフが高い知識や技術を持った状態を目指しています。

具体的には、好ましくないコミュニケーションは何かを考えたり、痛みを経験した人と対話をする方法や対話術を学んでいます。ひとつひとつの発話について、「いまの言い方はどうだったか?」を検討しています。

「虐待サバイバーの課題解決」から「虐待のない社会づくり」へ

ー現在「虐待サバイバー」というという課題に対して事業を進めていると思いますが、今後もし別の課題に取り組むとしたらどんなことに挑戦したいですか?

最近、リアルタイムでの虐待についての相談件数が増えています。僕たちの事業に、ママさんが参画してくれているのですが、その方曰く「働く場所があることで、周囲に理解者や相談者が増え、(自分が子どもを虐待することを)未然に防ぐ力になっている」とのことでした。

僕たちの事業が、「子育ての問題」や「虐待の連鎖の問題」を解決できる可能性を感じています。例えば、子育て相談をできるコミュニティを運営して、匿名で相談したり、Zoomで話し合える場を提供することなどで、子育てのストレス軽減を目指すことが、虐待のおこる原因を取り除けるのではないかと考えています。

ーありがとうございます。ますます事業が拡大していくと思いますが、今後の事業をすすめる上で必要だと思っていることはありますか。

大きな話になりますが、新しい法律や政策の実現を目指す必要があります。いまの社会では、誰が「虐待サバイバー」か分かりません。現在「障害者雇用」という枠組みはありますが、虐待サバイバーの方に対しても似たような枠組みを作っていくことが必要だと思っています。

障害者雇用の文脈で語られる「合理的配慮」という言葉がありますが、それが「虐待サバイバー」に対しても行われる社会になることで、サバイバーの方に限らず、さまざまな方の生き辛さ・働きづらさを解決できると思っています。

そのためにも、政策提言して、会社全体を変える。結果として日本のすべての会社ー400万社ーが変わる必要があると考えています。

ー協力したい企業や社会のステークホルダーはいらっしゃいますか?

「既に虐待サバイバーにアクセスできている組織・会社」ですね。例えば、精神科やNPOなど。定性データを集めるためには接点が必要なので、NPOや病院の先生と協力しながら、社内のデータベースを増やしていきたいです。

それから、虐待サバイバーなど、うまく社会で活躍するには工夫が必要な方と働きたい企業と出会うことも重要です。一緒に仕事をしながら、虐待問題という根深い社会問題をともに解決できると思います。

大切なのは「問題解決を楽しむ」こと、そして…

ーありがとうございました。最後に、ソーシャルセクターに興味のある人にメッセージをお願いできますか?

問題解決を楽しむことを意識してほしいです。そして、無理や自己犠牲をしすぎず、目の前のパートナーや親友を大事にすること。どちらも、目の前のこととしっかり向き合うことです。

それがあって初めて会社や社会の課題解決に向かえるようになります。ひとりひとりがそれを実現することで、文化が形成されていきます。

ーそして、起業などに興味のある読者の方にも、メッセージをお願いします。

まずはなんでもいいので、自分のできることをやってみることですね。必ず新しい発見があります。

例えば、ソーシャルグッドの文脈ひとつとっても、自分のしっくりくる社会課題に向き合っているNPOを探して寄付をする。ペットボトルを水筒にする。

そんな些細な、社会をちょっと良くするアクションを、身近なところから始めることが大事だと思います。

ー力強いお言葉、ありがとうございました!

企業名:株式会社RASHISA
代表:岡本 翔
設立年:2017年1月23日
ひとこと事業紹介:虐待サバイバー向けのBPOサービス「RASHISAワークス」
ホームページ:https://rashisa123.com/
オウンドメディア:https://social-port.jp/
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この記事を書いた人

たかお

本業にてコミュニケーションマネージャー(マーケ、広報、採用広報、組織開発領域等)を担う傍ら、複業としてコミュニティ運営やメディアのインタビュー担当、人事代行、ライティング、PR担当などに関わる。 趣味はパン屋さん巡り(パンシェルジュ検定1級取得)。 得意技は「住んでいるエリアと好きなパンを聞くと、パンをおすすめできる」こと。 SNS等で文章を書き散らすことと、ストレングスファインダーの1位である「収集心」を活かした推し事が生きる糧。推しを推す熱量には定評あり。 最近の推しはイコラブちゃんとサンリオとウマ娘(だいたい箱推し)。