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「柔軟性がある社会」を目指して、いま出来ることを【huu inc./UIデザイナー 福井春菜さん】

「柔軟性がある社会」を目指して、いま出来ることを【huu inc./UIデザイナー 福井春菜さん】

近年、場所を選ばずに仕事をするライフスタイルが徐々に増えてきているなか、5年前の20歳の頃から旅暮らしデザイナーとして独自のスタイルを貫く福井春菜さんへのインタビュー。

短大卒業後わずか8ヶ月で独立し、その後フリーランスデザイナーとして活躍。UI/UXを中心に様々なサービスのデザインに携わる一方で、クリエイターコミュニティの設立や法人登記など着実に独自の地位を築いている福井さんのこれまでの歩みを聞いた。

ーーまず、福井さんがデザイナーになろうと思ったきっかけから教えてください。

元々は海外で暮らしながら仕事をしたい、そのために独立をしようというのがありました。フリーランス=エンジニアというイメージがあり勉強したのですが挫折してしまい、デザイナーでも叶えられることを知ってデザインを学びました。

ただ、ライターやディレクターなど他にも色々なことをやってみて、結果的にデザインが一番面白いと思えたことが大きかったです。

ーー普段は主にUIデザインをすることが多いと思うのですが、UIやUXを主軸にしていこうと思ったのはどういうことがきっかけだったのでしょう。

人が実際に利用する、使うという行動のところまで考えてモノをつくるというところが面白かったからです。

よりよくするために考えて、それを作業に移すのが好きなので、クライアントの意志を深く掘り下げて聞いて話し合うことが出来るのも大きいです。

ーー一般的にデザインをある程度やるとディレクターという道もあると思うのですが、福井さんはディレクション経験もあってその後もデザイナーとして活動されていますが、これはどうしてですか?

周りの方にもディレクションをやっていったほうが良いよと言われることもあるのですが、とにかくディレクションが得意ではなく……。

正社員として働いていた経験が少ないので、どうしても調整やそのためのコミュニケーションが上手く出来ず、これまでも助けていただいて何とかなってはきているのですが、多分わたしの知らないところでも迷惑をかけているだろうなというのが想像できます。

ーーなるほど。ディレクションが苦手だと思った一方で、デザイナーが楽しいと思ったきっかけは何だったんですか?

スタートアップの自社サービスのデザイナーとしてメインで進めていったことがきっかけです。社長とエンジニアの方と毎日打ち合わせをしながら進めていき、営業の方に使ってもらってフィードバックをもらうみたいなスピード感と、小規模で自分たちの頭にあるものがどんどん形になっていくという手触り感も魅力でした。

みんなの考えているものが自分の手で見えるものになるのはとても気持ちが良かったです。

ーーデザイナーのキャリアとしてはそこからどうやってステップを踏んでいったのでしょうか?

その会社で一人デザイナーとして裁量も大きくやらせてもらっていたのですが、どうしても今後のスキルアップを考えた時に二つの制作会社と組ませていただいて様々な案件に関わったことで自分のなかで幅が広がりました。

日本各地を動きながら仕事をしていくなかで、福岡が気に入って福岡に拠点を持とうと思った時に福岡のデザイン会社とも契約させていただいて仕事の幅も増やしたような形です。

そこから2021年末に法人登記したのですが、それも「あの時会社作っておけばなあ」と将来思うなら今やっちゃおうと、まだ登記しただけです(笑)

ーーここまでかなり速いスピードでキャリアを駆け上がっているようにも見えるのですが、ターニングポイントとなったのはいつだったのでしょうか?

そうですね、スタートアップでメインデザイナーをやる前のタイミングです。

そもそも、海外で働くとか、そのために独立すること自体が目的だったので、いざ独立してみると、思っていたことよりもすんなりなれてしまったことに無気力になってしまい、本当にやりたいのはこれだったのかとか色々考えているうちに、もっとデザイナーとしてのスキルをつけたいと思ったのが大きなポイントになりました。

ちょうどその頃、ある案件でめちゃくちゃ戻しをもらって、何が正しいのか全然わからなくなったときに、自分なりに正しいと思うことを自信を持って伝えられるようになりたいと思ったことがポイントになっています。

ーー今はそこからかなり出来ることも増えて、案件の幅も広がっていると思うのですが、今後できるようになりたいことだと何がありますか?

まずはビジュアルの表現幅を広げて、めちゃくちゃかっこいいデザインを作れるようになりたいということと、toC向けのアプリのデザインに挑戦してみたいですね。

一つのサービスのデザインを作り上げて効果を見ながら改善していくプロセスを踏みたいというのは、いまやってみたいことです。

ーー旅暮らしデザイナーとしてさまざまな地域に住んだり旅をしながら生活することで、仕事のほうにも何か新しい切り口が手に入ったりするのでしょうか?

うーん、あまり特別に何か新しい価値観が手に入るというよりは、同じところに居続けるとどこか息苦しくなるので、そういうことからの解放というほうが強いかもしれません。

ただ、海外などの新しい場所に行くと当然食べるものや気候、文化など何もかもが変わるので、自分の中にある固定観念を外すことに慣れが生まれることはプラスに働いているような気がします。

柔軟に、これまでの枠にとらわれないようにしようと常に意識し続けて物事を判断出来るのは、旅の生活レベルで固定観念を外すことが多いからだと思います。

ーー固定観念を外す、というのはモノをつくる上でとても大事ですよね。デザインなど解が一つではない中で、自分の中でブラさないものはどうやって決めているんですか?

まずは自分の中で良いと思えるとか、かっこいいと思えるかどうかというものを意識しながら、何よりもクライアントの意志の部分を大事にしています。

意志があってはじめてデザインのゴールが生まれてくると思うので、意志を深堀りするということは大切にしています。

ーーまた、福井さんは以前より社会課題の分野にも関心を持たれていますが、これも海外に行ってからなのですか?

もともと意識はしていたのですが、実際には海外に行ってからかもしれません。

海外に行くときも最初にスイスに行っていて、それも安楽死が許容されている国の生活を見てみたくて行ったんですよね。もちろん、行ったところで安楽死の現場に立ち会えるわけでもないのですが、何となくその街の雰囲気に触れてみるなかで感じるものがあったりとか。

その後ギリシャにも行ったのですが、何より大きかったのはその二つが英語圏ではなかったので、英語もあんまり伝わらなくて「海外に行くか行かないかの理由に英語が出来るか出来ないかは関係ない」と思えたことです。

ーーそこからじゃあ具体的にそういった領域のこともやってみようというのは別のことだとも思うのですが、それには何かきっかけはあったのでしょうか?

例えば、わたしは生理が重く、そこからフェムテックの領域に関心を持ちました。

なかなか低用量ピルも市販で売られるための認可がおりませんが、それは変化に対する怖さ、特に知識がないものを受け入れる怖さからきていると思うので、知ってもらうためのアプローチを考え続けるというのは取り組みたいですね。

社会を変えるというミッションよりも、一人ひとりにアプローチをかけていってどんどん知ってもらう人が増えるということのほうが実現可能で取り組めることだと思っています。

ーーそうですね。多くの会社がビジネスをしながら社会を変えるということを掲げていて、両方をとる難しさというのは経営者たちも抱えているように感じます。

フェムテックをはじめ、いろんな問題に関心はあるのですが、わたしの中で「柔軟さのある人を増やしたい」というテーマを持っています。いま多様性とか色々なことが言われているなかで、それでもやっぱり知らないものをすっと受け入れることが出来る人はまだまだ少ないので、そういった「知らないならじゃあまず知っていこうか」という考えをどう広げていくか。そこからもっと失敗を許容出来る人、失敗を気にせず挑戦出来る人を増やしていきたいですね。

ーーそういったことに挑戦する中で、福井さんのなかにある軸というのは何なのでしょうか?

わたしは毎日楽しくすることが続けば人生は楽しくなると考えているので、「楽しそうか」と「その人が好きか」という単純なものにしています。

広げたいものとかやってみたいことはあるんですが、そのために毎日コツコツと積み上げていくことよりも、楽しいことをやっていくなかでそこに近づいていけば良いな、みたいなスタンスでやっています。

ーー福井さん自身がかなり柔軟に生きて、考えてという印象があるんですが、元々なにかに影響を受けたりはしているんですか?

それが、何かに影響されてということが本当になくて……。コンテンツとか人の影響とかよりは常に自分の中にある「楽しそうか」を気にしています。昔はそういうものがほしいなと思っていたのですが、今ではなくてもいいかなと思っています。

ーーすごいですね。自分の中での迷いとか悩みがあったときにどうやって消化しているんですか?

あんまり悩んだりすることもなくて、自分の中で少し悩んで答えが出なさそうなものはどんどん切り捨てていって、今何がしたいか、どうしたほうが良いか、どうやったら楽しいと思えるかみたいなそういったことを考えて決めています

ただ、悩む人というのは考えて自分の中でその解決策とか結論が出せる人だと思うので、それが出来る人は凄いなと思っています。

ーー悩みを切っていけるというのは強烈な強みですね。

強み、でもあり弱みだとも思うのですが、そういう単純さに加えて「当たり前がない」のが自分の武器だと思います。

上手くいかないこと、失敗もこれからもたくさんあるとは思いますが、楽しいと思うことをやっての失敗なら後悔もないので。

福井春菜

huu inc. 代表取締役/UIデザイナー

旅暮らしというライフスタイルで日本各地や海外をめぐりながら、デザインやスクール講師などを行っている。株式会社MAGiC HoURとともに社会課題に関心があるクリエイター向けのクリエイティブスタジオ「UMI」を設立。

Twitter: https://twitter.com/Haruna_F1207

Instagram: https://www.instagram.com/haruna_f1207/

この記事を書いた人

DaiFUKU編集部

「社会に、ちょっといいことを。」そして「社会課題を、もっとポップに。」オウンドメディア「あんこぎっしりWebマガジン・DaiFUKU」編集部です。