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【前編】共感資本社会の実現を目指して、eumoの事業創造【株式会社eumo 代表チーム 新井さん・岩波さん・武井さん】

【前編】共感資本社会の実現を目指して、eumoの事業創造【株式会社eumo 代表チーム 新井さん・岩波さん・武井さん】

【本日インタビューした皆様】

新井さん
「お金とは何かを探求しています」

武井さん
「新しい社会の仕組みを研究しています」
岩波さん
「人間の認識を広げていくような
機会と場と出会いを創出しています」

eumoが目指すもの

━ 本日は宜しくお願いします!早速ですが、eumoのビジョン・ミッションを教えてください。

武井さん:
eumoは、端的に言うと「共感資本社会の実現」を目指しています。「共感資本社会」というのは、明確には定義しているわけではないのですが、「お金ではなく、信用や信頼といった「共感」が資本になっていく社会」という意味で使っています。

さらに、僕たちはそんな共感資本社会を「社会のみんなでっていく」ということも大切にしています。企業として僕らが作って提供するのではなく、一人一人がどういう社会で生きていきたいかを一緒に考えて創っていく。それを考えるうえで、コンセプトが近かったり向いている方向が同じ人がそれぞれ集まってコミュニティをつくるのが「eumo」の役割です。

eumoの3つの事業

ー ありがとうございます!素敵な理念ですね。では、事業としてはどのようなことをやられているのでしょうか?

武井さん:
事業は、
①共感コミュニティ通貨 eumo事業
②eumo academy事業
③投資事業
の3つの事業を行っています。

僕からは共感コミュニティ通貨eumoについて話しますね。
「共感コミュニティ通貨 eumo」は、一般的にいう地域通貨事業です。お金を「幸せになるための手段」として再定義した電子マネーで、経済合理性が全くないお金です。

最近普及している電子マネーや地域通貨は、使う人にキャッシュバックやポイントといったお得な付加価値がつきますが、共感コミュニティ通貨eumoはそうではなく、みんなで一緒に経済圏を創っていく、贈与をするということがそもそもの目的にあります。eumoはみんなで助け合ったり、好きな事業者を応援することができる電子マネーで、機能としてチップ機能とメッセージ機能が埋め込まれています。

チップ機能では、デフォルト設定で定価の10%を、最大で100%をチップとして払うことができます。ユーザーがこの人を応援したいな、多めに払いたいなと思ったら自分で自由に価値を決めることができる仕組みです。この「共感」で価値を決められるという点に、資本主義的な規模の経済ではない経済をつくり出すことができます。共感コミュニティ通貨eumoが、社会の中で生まれる助け合いや思いやりのきっかけになってほしいです。先日アプリがリニューアルしたので、これからどんどん使えるお店やユーザーを増やしていきたいと思っています。

新井さん:
それから、三ヶ月で失効するということが、共感コミュニティ通貨eumoの一番の特徴です。つまり、「腐るお金」なんです。普通のお金は腐ることがないので貯めることができますが、僕たちはお金が貯められるから貧富の格差が開くと考えています。このお金の基礎知識については、後ほど僕からお話しますね。しかし、共感コミュニティ通貨eumoは「循環するお金」であることを大切にしています。貯めることができず、使わないといけないため循環するお金です。こうした「循環するお金」に共感してくれる人、それを良いと思ってもらえる人を増やしていきたいです。

共感コミュニティ通貨eumoを実際に使用している様子

ー では次に、eumo Academyについても教えて下さい。

岩波さん:
はい。eumo Academyは、端的に言うと教育・人材育成事業ですが、この言葉が表す以上に色々な側面を持った事業です。

先ほど武井さんも仰ったように、eumoでは共感資本社会の明確な定義はしていませんが、つまりは目に見えないものを大事にしていこうよ、ということなんです。 

人の認識している世界というのは限定的で、人は必ず自分の視野の中で物事をみています。そしてその視野は、現代社会の常識や資本主義的価値観に当てはまった範囲の広さです。

例えば、今の社会では全てをお金で換算して判断することがほとんどで、それを一つの常識として認識しています。それ自体は悪いことではないのですが、限定的な見方をしているという認識自体がそもそもないことで、つまり常識の外側を考えたり認識することができないということなんですね。

そこの枠を外していかないと、やはり新たな社会像を創造していくことはできません。eumo Academyは、新しい世界観やものの見方を考えたり、自分たちの限定的なものの見方から抜け出す体験を創出している事業として展開しています。僕たちはこれを「認識の拡大」と呼んでいます。どういう常識や固定概念で世界が動いていて、自分は世界をどのような世界観でみているかを認識し、ではその認識が拡大した、今までの常識から外れたときに、自分が一体何を大切にしたいか、どういう社会を創造したいのか…といったことを問い続けることが必要だと考えています。それを問い続けることで、新しい世界が見えてくるんですね。

eumo Academyではこうした「認識の拡大」を、教育というよりは色々な人たちとの出会い、経験、本、旅、場所…さまざまな体験を通じて創出しています。共感コミュニティ通貨eumoも、その体験を増やす一つのツールですね。

eumo Academyの内容としては、基礎講座で認識を広げたり、受講生同士や社会に向けて実践している人との出会いがあったり、実際に地域に行ってフィールドワークをしたり、通貨をデザインしたり、多岐に渡ります。
現在Academyでは6期生が始まっていて、これまで約100名以上の卒業生がいますが、すでにその中から色々な活動が生まれています。

受講の結果、今までの常識の延長上ではやらなかったであろうことをやり始めている人が増えていますし、確実に人の人生に変化が生まれています。社会の常識だからやらなければいけなかったことではなく、自分が本当に大切にしたかったことや価値だと思っていることに気づく人が増え、それを表現していくような活動がどんどん立ち上がっているんです。企業内で事業をつくっている卒業生や、地域に移住して関係性資本を積み上げる喜びを見出している卒業生など、活動の種類は千差万別です。

eumo Academyの様子

 

ー 最後に、投資事業についても教えてもらえますか。

武井さん:
はい。社会システムデザイン事業部と呼んでいる事業なのですが、投資を通じて新しい社会や会社のあり方を追求する事業です。いわゆる社会的インパクト投資と呼ばれている、ソーシャルベンチャーやローカルな活動に対するエクイティファイナンスのようなことをしています。

現在は、ファミリーのような関係性の会社3社に投資をしています。株式を持ち続けると、会社の事業として出資を行うことが難しい側面があります。会社にエクイティの資金をいれる行為が変わらないといけないんです。

そもそも、会社は株主からの力学が強く、株主からの影響を強く受けます。株主から利益を上げるように圧力があると、どうしても短期的な利益を目指した運営になってしまいます。

eumoでは、どういう資本の使い方が最もサステイナブルなのかを常に考えた経営をしています。なので、今年の7月頭に非営利化をし、株価を上げないという前提で会社を運営しています。これは、eumoが循環型の株式会社になったということなんです。

 株価を無理して上げていくと、株を購入できる人が限られるようになり、最後は大企業に売却されます。意図せずに資本主義に組み込まれる形になるんです。しかし、ローカルビジネスやソーシャルビジネスは、拡大させるよりも存続させることの方が重要です。そのためには、株を引き継ぎ、バトンを渡していくということが最も重要です。「株価を上げないエクイティファイナンス」を実現したいのです。

株主は現在(7月取材時点)、法人を含めて77人います。全て持ち寄り型の株式なので、eumoは支配者がすでにいない、社会のコモンズ、つまりみんなの会社になっています。
こういう会社のあり方が今の法律のもとでもできるということを発信していきたいと思い、年内には株式のクラウドファンディングの実施を予定しています。クラウドファンディングを通して、さらに株主を増やしていきたいと思っています。 

現在は、こうした持続的な法人の持ち方をどのようにして広めていくかを模索中です。株式のクラウドファンディングの仕組みなどを使って、ソーシャルやローカルに新しいエクイティファイナンスができるような装置をつくりたいです。

そのあとに待っているのは「コミュニティエグジット」ですね。IPOとかではない、みんなで持ち合う出口が株式会社にはあるのですが、ほとんど事例もなければ運用されている会社も多くありません。こういう出口があるんだよ!ということを、ソーシャル系のアントレプレナーに知ってもらいたいです。

新しい組織のかたち

ー ありがとうございます!会社の仕組みとしても、新たな創造に取り組んでいらっしゃるんですね!

武井さん:
そうですね。先ほども言ったように、eumoは今年の7月頭に非営利株式会社になり、その際定款に「純利益と残余財産の分配を株主にしません」と書きました。株価も上昇させないので、出資者にとってeumoの株を買う金銭的メリットはない状態なんです。

それでも、現在2億5100万円もの出資額が集まっています。これは、「金銭的メリットがなくてもこういう社会が実現したらいいよね」とか、「そのためにコミュニティ通貨が必要だよね」とか、僕らの活動に共感してくれている人が出資者になってくれるからです。お金や営利株式会社が当たり前の社会の中で、本当に凄いことだと思います。

出資者の方が金銭的メリットではなく共感で集まっていることもそうですが、eumoの周りにはソーシャルキャピタル(社会関係資本)がたくさん集まっているんです。社会関係資本とは、信頼やネットワークなど、人々の結びつきや関係性のことをいいます。それがたくさんあってこその出資額だと思いますし、僕らの知らないところでもeumoのステイクホルダー同士で助け合いがたくさん生まれているのではないかなと思います。例えば、我々はeumoの周りに「チームeumo」というFacebookグループのコミュニティを運営しています。現在1200名ほどの共感者たちが集っていて、営利非営利の活動を行うメンバーが互いに助け合う関係性を作っています。助けが必要な時に助けてもらえる関係性があると、お金が介在しなくても物事が進んだり実行したりできるんですよね。仲間こそが資産であると言うのは方便ではなく、実際に現実社会の中で経済性を持つと言う事です。

近いうちに株式のクラウドファンディングも実施する予定なので、いったいどのくらいの方がeumoに共感してくださるのかが楽しみです。

Facebookコミュニティ「チーム eumo」

ー 「共感」という言葉を軸に、多くのステークホルダーが関わっているんですね!

岩波さん:
eumoは、いわば境目が溶けている点も特徴的ですね。資本主義は所有の仕組みなので、そこじゃないところを目指そうとすると会社という定義が曖昧になるんです。「社会的価値の創出」が目的になるので、もはや自社の利益の概念ではない、ということになります。社会の一般常識から見るとeumoの説明するのが難しいですし、実際理解するのが難しい領域のことをやっていたりします。

ー なるほど。「会社」というよりは、「組織」のような形でしょうか?

武井さん:
そうですね、ティール組織よりももっと解放性が高いと思います。会社の中と外があやふやで、あまり役職や立場が関係ないんです。目指すものに共感している人がその都度必要に応じて集まって、お金が発生するものもあればしないものもあったりします。

株式ではない、普通のクラウドファンディングを昨年READY FORで行ったのですが、Facebookコミュニティ「チームeumo」でクラウドファンディングの手伝いをお願いしたところ、約40人もの手伝ってくれる方が集まりました。週1回、定例でミーティングをしながらみんなでリターンや文章、デザインなどを考え、約2ヶ月準備をしてクラウドファンディングを立ち上げたのですが、立ち上げた瞬間から熱量も反響も大きかったです。なんと2日で目標金額だった500万円を達成し、ネクストゴールとして1000万円を目指したらそれも達成することができ、最終的に1200万円弱くらいのお金が集まりました。

先ほども話したように、金銭的メリットやリターンがないのにそれだけのお金が集まっているのです。他にも、eumoに関わりのある人それぞれがやっているプロジェクトを、お互いに手伝ったりもします。

資本主義の今までの力学は、会社が利益や売り上げ、財産をどれだけ増やしていけるか、のゲームでした。僕らはそうではなく、社会全体の利益や資産を高め、みんなでそれをシェアしてみんなで豊かになっていけるか?というゲームルールなんです。だから、自然と会社の定義があやふやになってしまうんですよ。

岩波さん:
いま、資本主義の力学の話がでましたが、多くの人々が縛られているものはお金なんです。
「お金がないと生きていけない…」
「お金が動いていないとやった気にならない…」
「お金を生み出してないと仕事じゃない…」
といったようにです。お金ももちろん大切ですが、仕事の本質的な意味は「自分が大事にしたいものを大事にすること」、「自分が価値だと思っているものを創出すること」にあると僕たちは思います。

eumoは、人々が当たり前のように縛られている常識的な概念の少し外側も考えられる、「認識の拡大」に繋がる経験をeumo Academyで創出しているのですが、「お金」に対する認識は現代人が最も縛られている常識の一つでしょうね。「お金の教育」はとても重要だと思っています。

ー なるほど。今「お金の教育」の話がありましたが、もう少し詳しくお伺いできますか?

新井さん:
はい。お金の話の前に、「ファミリー」の話を少しします。

実は、eumoは以前僕一人で代表をやっていたのですが、代表が一人というのは「みんなで創っていく」というeumoらしくないので、7月の非営利化と同時に代表が僕、岩波さん、武井さんの三人の「代表チーム」に変えています。代表チームをつくり、全てをチームで考えることが大事だからです。

僕はeumoが、なるべく開放された組織、誰もが中身を見れる状態であったらいいなと思っています。開放されていない、つまり壁があれば利益相反が生まれます。そうではなく、みんなが「ソーシャルファミリー」なんです。ファミリーなんだから一緒にやっていく、ただそれだけのことです。

社会で求められること、やらなければいけないことに対して、それが得意な人もいればもちろん不得意な人もいます。結果が出る人もいれば出ない人もいます。

「お金」は、そういう考え方から外れる顕著なものです。資本主義の仕組みの中で、所有という概念が存在してしまうが故に弊害が生まれるならば、共有という概念で考えればいいと考えています。二項対立にするつもりはないのですが、みんながソーシャルファミリーであること、共有化することの一番の抵抗は「お金」なんです。

人々は、みんな「自分がお金を占有している」、「お金は増える」と思い込んでいます。しかし、根本的な話をすると、お金は増えません。それができるのは手品師と日本銀行だけです笑。お金の動きを捉えていただくとわかるのですが、お金は増えてるのではなく、どこかに集まっているだけです。投資で儲かるということは、どこかでお金が集まったものが再分配され、多めに集まっただけで、お金自体は増えていません。

経済もそうですが、「お金を健全なコミュニティの中で循環させること」がとても重要なのにも関わらず、人々は「お金を貯める」ということにフォーカスしすぎていると思います。何故そうなるかというと、そもそもお金の教育ができていないことが問題で、多くの人が「お金を大切にすることは貯めること」だと思っているからです。

なので社会はもっと、生きたお金の使い方をすることが幸せを手に入れることだと知らないといけないんです。お金は「ありがとうの循環」であり、「ありがとうを表現するもの」なのです。自分が感謝を感じることにお金を届けることが一番重要です。

しかしいつの間にか、社会には「できるだけお金を払わない」という消費者的思考が植え付けられてしまっています。そうすると、生きたお金の使い方をする、ということが行き詰まってしまいます。そういった行き詰まりではなく、本当に自分たちが大切にしたい物を大切にする社会にするために、健全なお金の循環をうんでいく必要があります。

こういった理由も含めて、お金は資本主義の根幹なのですが、多くの人は「お金が変わる」ことをイメージできません。お金はルールとして決まっていて、その上で資本主義という仕組みが成立していると思っています。決して「お金」に対して疑うことをしません。

僕は、この「お金の常識」を変えたいんです。

でも、いきなり常識が変わるというのもなかなか難しいと思うので、それを体験できるのが「共感コミュニティ通貨」です。「共有する」「貯まらない」「ありがとうの循環」とはどういうことなのかを実感できるお金です。こういった考えのもと、eumoには仲間が集まっています。

ー ありがとうございます!

後編では、これまでの活動の経緯や、今後の取り組みについてお伺いしていきます。乞うご期待!

この記事を書いた人

miyunagai

ライター、インタビュアー。日々耽るのは享楽、芸術は勉強中。希望ある未来と懐かしくなる過去をつくるべく、ゆるりと南船北馬。現在大学四年生。