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「倫理観が備わった社会が一体全体俺にどんないい影響を及ぼすと言うのだ。」

「倫理観が備わった社会が一体全体俺にどんないい影響を及ぼすと言うのだ。」

カーテンの隙間から差し込んだ休日の日差しが、まだ開かないまぶたを刺激する。
無印のカーテン薄くね?と文句を垂れながらもう一度布団を被る。今度は日差しで目が覚めないよう、掛け布団を頭まで被せる。
そんなこんなで、しっかり目が開いて体を動かす頃には、時計の針は真上を向こうとしていた。
いっけね、もうそんな時間か。

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鍋に湯を加え火をつけながら、こないだネットで購入したオーガニックコーヒーの袋を開ける。
先週見たYouTuberがうまそうに飲んでたのと、キャンペーンで普通に買うより安いから買ったのだから、俺に「何でオーガニックなの?」と聞いたところで無意味だ。意味なんてわかりゃしない。

ただパッケージデザインは思ったよりかっこいい。Instagramでいいねが50を超えるのはフォロワーが300に満たない俺のアカウントからしたら快挙だ。さすが人気YouTuberのおすすめといったところか。

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沸騰したお湯をコーヒーの準備をしたカップに注ぐ。
寝癖も整えないままテーブルの前に座り、吸殻の中にあるシケモクを見つけ火をつけた。
あ、この部屋タバコ駄目だったっけ。まあ、別にバレやしないだろう。

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自分で言うのも何だけど、俺はモノにはこだわっている方、だと思う。
何をこだわっているのかよくわからないけど、流行なんかに左右されたことはないし、雑誌のスナップに声かられて写真撮られたこともあるし、何なら健康志向なので、自炊もしている。毎日農家直送の野菜をたっぷり摂取している。無論、タール二桁のタバコをお供にしながらではあるが。

ちなみに家具も地方の職人さん(名前は忘れた)が作っているこだわりのモノだ。
シンプルで洗練されたデザインが気に入った。流行に合わせた量販店では販売されることがないシックな一品で、誰とも被らない一点モノのような気がして購入した。手入れがめんどくさいから隅っこが埃まみれなのは勘弁してほしい。

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世間では、俺のようにこだわった商品を買い、あたかも独自の文化圏を持っているような生活に憧れる人間もかなり多いみたいだ。アイデンティティの欠落が問題視されているからなのか、服であれ家具であれ食事であれ、自分なりのこだわったモノで自分の殻を作る。

「丁寧な暮らし」がお題の何の変哲も無いYouTubeを流しているどこかの人間が、会社で8時間+残業をしている俺よりお金を稼いでいる事実に驚愕している。かくいう驚愕している俺自身、今朝のコーヒーのお供はそれだ。しかしなぜか俺の生活ぶりはYouTubeでは稼げなかった。

あ、いけね。牛乳を入れ忘れた。
「再生紙」を利用!と大きく書き出された紙パックを冷蔵庫から取り出し、ブラックコーヒーをマイルドに変えていく。この牛乳、濃いからコーヒーに入れるとちょうどいいんだよな。何を隠そう、僕はブラックコーヒーなんて飲めやしない。

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そういえばこの間家に来た友人に、「環境に良さそうな家だね!」と言われたことがあるがうちのどこを見てそう思ったのか。もし家の外にある太陽光パネルのことを見てそういったのなら、俺は全く嬉しく無い。個人的にはあれはダサいから撤去してやりたい気持ちでいっぱいなんだ。

自分の身の回りのモノが社会において何をもたらすのかなんて、俺の知ったこっちゃ無い。
吸ったタバコはおそらく環境に害を与えているし、そもそも俺は人間だから生きているだけでCO2を大量に排出しているわけで、今更社会や環境にいいことなんてする意味がないと思っている。これは小学校で人間の呼吸がO2を吸いCO2を出していると習ったその日からずっと思っていることだ。
極論、俺の生きている間に俺1人がどれだけいいことをしても世の中レベルで何かは変わらないし、別にいいことしなくても生きていけるというか、変わらない毎日を過ごしていけるだろうと根拠のない自信だけは持っている。だから好きなもので身の回りを囲って、出来るだけ後悔のないように生きていくのが使命だ、とも思っている。

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あ、予定に遅刻する。まずい。
余計なことを考えているからだ。
こないだ読んだ本に影響されたかな、一応Twitterでツイートしとくか。ウケ良さそうだし。
最近フォロワーが2000人を超えたSNSは、自論が正論に昇華されていくようでなんとも心地がいい。
お願いだからフォロワー数だけは減らないでほしい。

飲みきれなかったコーヒーを流しに捨て、タバコをもみ消す。
匂いがこもるのは嫌だから、今日は帰ってくるまで換気扇を付けっ放しで行くことにしよう。
ひとまず遅刻なんかしたら、彼女から大目玉だ。走れ、俺。

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この記事を書いた人

ぺーやん

年齢だけが本当で、他は仮名を使う。特技はペンを回すこと、ただ何かに使えたことはない。理由なく文字を書いているが、仕事となるとこれまた書けない変なやつ。一応既婚者。