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サブスクが減らす時間と労力。”ファッションサブスク”というもの

サブスクが減らす時間と労力。”ファッションサブスク”というもの

「定額制サービス」というものがある。今や「サブスク」という名前で世間に浸透しつつあるが、つまりは月額などで一定の金額を支払い、それに対応する期間サービスを受けられるという仕組みのことだ。今や音楽や動画、書籍など様々な分野で市民権を獲得しているが、私も例に漏れずサブスク愛用者の1人である。

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こういった音楽の聴き放題や書籍の読み放題は、自分の見聞を広めるためにもとても重宝している。興味のある分野はもちろん、日頃は触れないようなジャンルにも、定額サービスだから、と気軽に触れられる。暇つぶしにもなる。話題の作品を知れば友人との話題の1つにもなるだろう。私はこういった部分にサブスクの価値を置いているが、同じ考えのユーザーも大勢いるはずだ。

「ファッションサブスク」に求めるもの

そんな中で、毛色が違って見えているのが「ファッションのサブスク」だ。
「ファッションのサブスク」は音楽や書籍、動画などのサブスクと比べるとまだまだ認知度は低く、利用者の数も少ない印象を受ける。私自身の周囲に限って言えば、これの利用経験がある人はほとんどいない。

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まず「ファッションのサブスク」とは一体何か?代表的なサービス内容は、「月額料金を支払うとスタイリストが作成したコーディネート一式を借り放題」というものや、「服を自分で選んで単品でレンタルし放題」というものが多い。つまり服を購入する訳ではなく、定額で借りて不要になったら返却するというものである。何を隠そう、私もこの「ファッションサブスク」のユーザーの1人だ。

私は大学卒業後、社会人となった頃からとある大手サービスを利用していた。何年も継続している長期ユーザーでもある。最初は音楽や書籍のものと同じような、数あるサブスクの1つとしか思っていなかったが、何気なく読んだ運営会社のインタビュー記事によってその認識を改めることとなった。インタビュー記事内でこのサービスの運営者は、サービス開始時に想定していたユーザー層と実際のユーザー層が違っていたと語った。具体的に言えば、運営会社は「おしゃれ好き人や日頃から店頭で服を買っている人が、定額で様々な洋服を試すことができるサービス」としてリリースしたが、実際のユーザーは「服選びにお金や時間をかけたくないけれど、まあそれなりに見える服を着たい」という層が多くを占めた、ということである。

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これを見て、私は目を丸くした。まさに私自身が無自覚にこのユーザー層の1人だったからだ。
私はファッションへの興味はほとんどない。おしゃれとは何か、皆目検討がつかない。そのくせ見栄は一人前にあるので、パッと見てそれなりに見える服は着ていたい。ブランドや価格はどうでもいい。そんな人間である。
そんな私にとって、「ファッションサブスク」は有り難いものである。アプリを開いて「みんなが借りている人気の服」を注文する。家に届く。以前借りていた服はコンビニに持って行ってとっとと返却する。服への執着はないのであっさりとしたものだ。私の人生における「ファッション」に支配される時間を極限まで減らすことができるのが有り難い。

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これは私の例だが、「ファッションサブスク」を利用する人には様々なニーズがある。
もちろんおしゃれが好きで様々な服を定額で試したいという人もいる。
シーズンや流行遅れになった服は返却できるので、自宅に服が増えないというメリットもある。省スペースのために利用している人もいるだろう。
子育て中で服をゆっくり選ぶ時間はないが、ママ友との集まりにはそれなりに見える服で行きたいと考える人だっているはずだ。

「負担を減らすサブスク」のあり方

そんな様々なニーズを思い浮かべると、自然と「他のサブスクとのあり方の違い」を感じた。

市民権を獲得している音楽や動画、書籍のサブスクたちは「自分の好きなこと(興味のあるもの)を存分に楽しむため」の定額サービスとしての性質が強い。
たくさん音楽が聴きたいから。
たくさん映画を見たいから。
自分の普段読まない本にも見識を広げられるから。

一方でファッションのサブスクを利用する人の多くは「服に対する負担を減らしたいから」定額サービスを選んでいる。
服を選ぶ時間と労力を減らし、服を保管する場所を減らし、ファッションに対する負担軽減を図っている。

現在、私の利用しているその「ファッションサブスク」は、昨年の段階で利用者数2万人を突破し、黒字化して収益をあげている。
当初運営会社が想定してた「興味のあるサブスク」と同じくらい、もしくはそれ以上に「負担を減らすサブスク」にお金を使う人がいたということである。

今はまだ認知度の高くない「ファッションサブスク」という存在だが、当初想定していたユーザー層とは違ったとはいえ、一定の顧客のニーズとマッチしたサービスとして今後も生き残っていくのではないかというのは想像に難くない。
同時に、日本人が生活の中で服から与えられる印象にどれだけ左右させているのか、と考えさせられる。
現在のサブスク界は音楽などに代表される娯楽分野での発展が目覚ましいが、今後は衣食住の負担を軽減するサブスクの存在が一般レベルに浸透していくのかもしれない。ファッションレンタルのサブスクを利用し、食材の宅配サービスを利用している私はこう思った。もしかして自分は時代の最先端にいるのかもしれないな、と。

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この記事を書いた人

セトユウキ

ゲームと宝塚をこよなく愛するデザイナー兼イラストレーター。 スーパーで買ったお得サイズの肉を小分けにして冷凍している瞬間が好き。 最近はもっぱらウマ娘のことを考えている。