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こころを撮る、唯一無二のフォトグラファーとして【フォトグラファー 森川拓磨さん】

こころを撮る、唯一無二のフォトグラファーとして【フォトグラファー 森川拓磨さん】

人を撮ることを中心としているフォトグラファーは歴史上にも多く存在する。そんななか、「こころを撮る」をテーマに掲げる森川拓磨さんにインタビュー。

「こころを撮る」とはなにか。それは、悲しみのなかの愛情、喜びのなかの寂しさ、あたたかさのなかの不安、そんな入り混じった感情がふと顔を見せる瞬間なのかもしれません。

ーーまず、森川さんがフォトグラファーな領域をやろうと思ったきっかけを教えてください

大学時代に世界一周をしたことが大きなきっかけになりました。

世界中を旅しながら、そこに生きる人々の様子を動画や写真に収めていきました。そこには人間の最低な部分、最高な部分が写っており、でもそのすべてが愛おしくて輝いているということに、とても感動したんです。

ーーいい部分も悪い部分も含めて人間だよね、と

そうです。そのとき僕の撮ったものを見返すと写っていたのは人人人(笑)

綺麗な景色や歴史的建造物などはたくさんあったはずなのに、本当に人ばかり撮っていました。その時初めて、いい部分も悪い部分もある「人」が本当に好きだということが自分の中で確信に変わりました。そこから社会人になったんですが、本格的に人を撮っていきたく、ずっと欲しかったカメラを買い直しました。

ーー社会人になるときはフォトグラファーを目指してはいなかったんですね

元々は「心豊かに生きる人を増やしたい」というのが社会に向き合うスタンスとしてあって、どうしても多くの人は労働の時間が長くなるから「心豊かに働く人を増やしたい」ということを就職活動の軸としていました。

そのなかで大きなことを成し遂げようと思ったら組織に関わる仕事をするのがいいかなと思い、新卒で組織作りに関わる企業に入社しました。

ーーでは、社会人をやっていくなかでフォトグラファーになりたいと思ったんですね。

自分の中では、カメラをやるのも、組織作りをするのも「心豊かに生きる人を増やす」という意味では変わらないのですが、シンプルに組織をつくるというアプローチよりも、目の前の人にとことん向き合って、それを写真という形にして発信していく、そういったアプローチの方が何か大きなことが出来ると段々思うようになっていきました。

契機となった、友人の家族写真

ーー「カメラを通して社会を変えられる」という実感は、いつ頃出てきたのでしょうか?

親友の家族写真を撮った時です。今まで一緒に過ごしていた家族が仕事や結婚といったそれぞれの事情で離れ離れになる。だからこそ離れても離れないために家族写真を撮ってそれぞれの家に飾ろうとなり、写真を撮ったんですけど、これが本当に良かった。親友の家族はもちろんのこと、Instagramに乗せた時色んな方から沢山の感想をいただきました。写真の可能性って計り知れないなと、その時感じたことを今でも覚えています。

ーーもう少し聞かせてください。色んな表現方法があるなかで、写真は何が違ったのでしょうか?

ありのままをうつせることだと思います。もちろん、とてもきれいに着飾って、外向けの顔にして撮影するものもたくさんありますけど、しっかりとコミュニケーションをとったうえで、その人のありのままを、こころが滲み出た瞬間をうつせるのが写真なんだと思います。

ーー森川さんは常々「心を撮る」ということを大切にしているそうですが、テーマを「心」にしたのはどうしてだったのでしょう。

定義できないものだからこそ、大切にしたいというのがまずあります。また先程お話ししたように世界中を旅して何よりも自分のこころを動かしたものが、愛しいと思えたものが人のこころだったからです。昨年末に開いた写真展のタイトルも「こころ」と名付けて発表しました。

ーー写真展を開いてから独立、というのはかなり珍しいケースのようにも見えますが、これはどういった経緯で開催したのでしょうか。

写真を撮っていると、直接言葉をもらうことがどうしても少なくなってしまいます。

もちろん撮影準備のとき、撮影当日とコミュニケーションをとり、納品時などにも感想はいただけますが、その写真を見た別の人がどう感じたのか、そういう声はどうしても届きづらいので。そのため、何か大きな目的というよりは、まずは写真展というものを開いて直接感想を聞いてみたいというのが先にありました。

ー実際、大きな反響、声がありましたが、森川さん自身は開催してなにか変化はありましたか?

確信を得られたことが一番大きかったように感じます。

言葉というものを超えて、気持ちでつながることができること。見る人によって受け取り方の違うナマモノであること、だからこそおもしろいこと。こころを撮った写真が、また別の誰かの心に届くこと。それらのことを写真展で実感することができました。

ーーいま、自身のなかで一番大切にしていることはやはり「こころ」ですか?

はい、技術だけで見たら上の人がいることはもちろんですが、「心」を撮る点においては一番でありたいと思っています。

ーー少しお話が変わりますが、そんな森川さんにとって忘れられないクリエイティブ作品はありますか?

田中みな実さんの写真集『Sincerelyyours…』と漫画『最果てのパラディン』です。

前者は写真集ながら修正がほとんどなされていなく、田中みな実さんの努力や美への意識を表現する最も効果的な方法が修正しないという結論を出したことが衝撃でした。

ありのままを撮ることを大切にしている自分としては、少なからず影響を受けています。

また、最果てのパラディンは作中に「”生きてる”のと”死んでない”のって、ずいぶんと違う」というセリフがあり、自分を見つめ直すときに思い返す言葉になっています。

ーー写真に関連するものを挙げられるかなとは思いましたが、多様な着眼点があるのですね。素人ではやはり思いつかないものでした。

それ以外だと、元乃木坂46橋本奈々未さんの1st写真集『やさしい棘』はこれまで見たアイドル写真集では見ることのできない表情をたくさん切り取っていて、いい意味でアイドルらしくない作品となっています。写真を通じて橋本さんのこころが、成長が伝わってくるといいますか。

ーーやはり、他の人の写真でもそういう「ありのまま」みたいなところはかなり気になるんですね。

自分のなかでの「いいもの」と定義しているものがそういうテーマだからですね。

ーー今後も「こころ」を中心に撮っていくことが目標ですか?

はい。これからも人のこころを撮っていきたいです。

ただこれからの挑戦として、夢を追っている人のドキュメンタリーでしたり、社会起業家さんなどの志を持って働かれている方を撮っていきたいとも思っています。また世界的な部分に目を向けて貧困や戦争など目を背けたりそらしたりしてもそこに確かに「ある」ものを残していきたいという思いもあります。

ーーそういうものすべて含めて自分たちの生きる場所だよね、と

どこまでいっても人って最低だったりするし、でも人以上に最高なものもなかったりする。そういうものすべてひっくるめて「生きてるっていいよね」と、そんな写真や動画をたくさん撮っていきたいと思っています。

森川拓磨

フォトグラファー

「こころを撮る」をテーマにしたフォトグラファー。人物写真を得意としており、家族写真や結婚式写真、コーポレートのメンバー写真など、人にまつわる写真、動画を扱っている。

Instagram: https://www.instagram.com/takumar__/

この記事を書いた人

DaiFUKU編集部

「社会に、ちょっといいことを。」そして「社会課題を、もっとポップに。」オウンドメディア「あんこぎっしりWebマガジン・DaiFUKU」編集部です。