年齢を重ねるにつれ、明るい服を着るようになった理由
「この服、お母さんが好きそうな柄モノよね」
「分かるわぁ。他の人が着ないような派手な色」
わたしをネタに、娘とオットがスマホ画面をスワイプしている。
どれどれ?とのぞき見する。わたし好み。ドンピシャにわたし好み。
「2人とも分かってるねぇ。好みだわ。どストライク」
♢
10代、20代のころ。茶色や黒など大人っぽい服が好きで、クローゼットはシックな色で埋まっていた。
子育て全盛期の30代、40代前半。白や青など爽やかカラーがメインで、足さばきのよいパンツが主流だった。子どもと遊ぶにはピッタリのアイテムだ。タンスを開ければ、ジャブジャブ洗濯できる動きやすい服ばかりが並んでいた。
ところが。
40代半ばを過ぎると様相は一変。
若いころには決して手にとらなかった明るい色—例えば、黄色・オレンジ・サーモンピンク・黄みどり・ミントブルーなど—の服を好んで着るようになった。
主流は柄モノ。可愛らしい小花プリントではなく、インパクトある大きなアイテムのプリントだったり、異国情緒たっぷりのデザインだったり。
はて?この変化をなんと呼ぶのだろう。
年齢とともに、明るく派手なデザインの服を好んで着るようになったのはなぜだろうか。解明しなくては。
♢
ハイティーンの娘のクローゼットから、黒一色のシックな服をとりだす。試しに着てみた。
なんだこれ…全体的にくすんで見えるぞ。
そのままでも顔がくすんでいるというのに、黒を着ると、ますます暗く見えるではないか。
こっちだったらイケるかな。
娘のお気に入り、モスグリーンのトレーナーを首にあててみる。
なにこれ…おばあちゃんみたい。
鏡の向こうに見えるのは、めっきり老け込んだ女性。
シンプルで暗めの服はもう着こなせないかも。気持ちがドドーンと暗くなる。
♢
はぁ…さっきの自分の姿に愕然としながら、自分のクローゼットを開ける。
黄色、オレンジ、サーモンピンク、まるで花畑のよう。そこには、元気をくれるカラフルなデザインの服が並んでいた。
そのなかでも一等お気に入りのブラウスを着て、鏡の前に立つ。8年も大切に着ている大好きなブラウスだ。
大きめの花がベージュの生地にちりばめられている。花の色はオレンジ、黄色、淡いブルー。袖口と襟には花模様のレース。
うんうん、コレだよね、これ。
明るいデザインのおかげで、顔まわりが一気に華やいだ。さっきモスグリーンのトレーナーをあてたときと同じ顔とは、とうてい思えない。不思議と背筋もシャンとする。
だからか…自分なりに腑に落ちた。
年齢を重ねるにつれ、明るい服を好んで着るようになった理由。
明るい色の服は、エネルギーをチャージしてくれる。
派手なデザインは、朗らかな気持ちにしてくれる。
スキップしたくなるみたいに。
外見も心も明るくしてくれるんだもの。これからもどんどん着よう。それでゴキゲンでいられるなら、最高じゃないか。
【編集後記】
素敵なテーマをありがとうございました!
ちょっとテーマの毛色は異なりますが、色といえば「歳を取ると紫色に染める人が増えるのはなぜか」という問いについては、白髪をきれいに見せたり、そもそも黒や茶色が入らなかったり、そもそもの心理として「目立つ色を入れることで、視線を髪に集中させたい」などの意見もあるみたいで、奥深いなと思いました。
また、色の好みのジェネレーションによる違いについても、アンケートが取られているようなので、こちらも是非参考にされてみて下さい。