ネットミームに関する自由研究:「見たことあるな」って感じるタイトル、締めの記事が多いのはなぜ?考えてみた!
おとなの自由研究テーマ(知りたいこと):
ネット上で見かける「表現の仕方」が世の中に定着する条件
背景:
インターネット上では、多くの人々が似たようなコンテンツやその表現の仕方を、日々再生産し、発信している。
コンテンツで言うと、グッズ化までされている「宇宙猫」などのジョークめいた画像や「関わってはいけない人の特徴」のようなマインドハック的な動画企画とサムネイルなどがある。多くのコンテンツは面白さを目的として作られているが、近年爆発的に用いられている #BlackLivesMatter といった政治的なものも存在する。
表現の仕方で言えば、動画、WEBサイト、SNS全ての媒体でも見かけるランキング形式(「(良いところ、おいしいもの、etc. )5選!」等)、金太郎アメのようなWEB記事の流れ(「調べてみました!→いかがでしたか?」等)、そしてTwitterで文字を段組みにしてみる書き方など、その表現が行われるプラットフォームに適したものが用いられている。
上記は例に過ぎないが、コンテンツ・表現の仕方などが記憶に残り、再生産されることを指してミームと呼ぶ。特に、インターネット上で生産・再生産されるものをインターネットミームと呼ぶ。
ミームは保持・表現・伝達と言う3つのプロセスをたどって、人々に定着していく。
それぞれ、簡単に言えば以下の意味である。
保持は、ミームに触れた人の記憶に、そのミームに含まれるアイデア・イメージが残ること。
表現は、そのミームに触れた人が、同様のミームを伝える表現を行うこと。
伝達は、ミーム保持者が行った表現がSNSやWEBサイトを通じて他者に触れること。
ミームの定着のしやすさは、コンテンツのミームであれば面白さ(保持のされやすさ)・発信のしやすさ(表現のしやすさ)、そして外部との関わり(状況的に保持・表現が増え、結果として伝達経路も増加)に依る。
例えば、「宇宙猫」は2006年ごろから作成されはじめ、簡単な画像加工で済むため現在まで再生産され続けている。また#BlackLivesMatterのハッシュタグは初出が2012年であるとされるが、その後ほとんど投稿がない時期を経て、黒人への差別的な取り扱いのある事件発生や、デモの発生のたびに投稿量が爆発的に増加・減少を繰り返している。
「表現の仕方」の定着プロセスもコンテンツと同様であるが、#BlackLivesMatter運用に代表されるような特定の表現形式を要求するイベントは存在しないため、その定着要因に差があると考えられる。
ランキング形式で発表を行うテレビ番組、YouTube動画、WEB記事は枚挙にいとまがなく、常に生産され続けている。反面、「いかがでしたか」記事はWELQ事件以後2017年ごろの発祥と思われるが、誕生当初から非難を受け消滅の危機にある。また前掲のTwitterでの段組み表現も筆者が観測した限り2,3週間で発信頻度が減少した。
ミームを分類すると11種類に及ぶとされる。「表現の仕方」の多くは「仕掛けミーム」に該当し、定着すると「伝統ミーム」へと移行する。「仕掛けミーム」は意図的・人工的に作られた流行性のミームであり、多くは自己の望んだ結果(映像なら視聴回数・時間など、SNSであれば評価数と拡散率)を得るために発信されるものである。流行ミームと同様、比較的持続期間が短いと言われている。
この仕掛けミームのなかでも、「ランキング形式」のように伝統ミーム化したミームと、「いかがでしたか」記事のような消滅しつつある「仕掛けミーム」が分かれていることの発見が、この自由研究の始まりである。
目標:
「仕掛けミームの伝統化」が起きる条件を明らかにすることで、ミームの定着要因の研究に貢献すること。
研究手法:
Twitter学術APIを用いたTwitter上のコンテンツの取得による定量調査並びに、Twitter上の「仕掛けミーム」に曝露したTwitterユーザーへのインタビューを行い、混合法研究を行う。
編集後記:
「インターネットミーム」に関する仮説。「Twitter構文」や「ネットスラング」とも類似の概念のように思うが、それらの成り立ちだけではなく、その盛衰に着眼しているところに興味を持った。研究手法として、定量定性両面から調査するとのことだが、それに加えて「それらの投稿を眼差すユーザの聞き取り」についても是非取り組みたいところである。